ステンレス鋼の曲げ加工に適したプレスブレーキ工具の選び方

ステンレス鋼を曲げる作業は、軟鋼やアルミニウムなどの柔らかい材料を加工する場合と比べて、独特の課題があります。その強度、加工硬化特性、およびスプリングバック特性から、工具の選定には細心の注意が必要です。適切なプレスブレーキ用工具を選択することは、単に曲げ加工を行うだけでなく、正確な曲げ角度、表面品質、そして工具の長寿命を実現する上で重要です。本ガイドでは、そのために不可欠な考慮点を解説します。

材料特性の理解

工具を選定する前に、ステンレス鋼の特性について十分に理解することが不可欠です。ステンレス鋼は比較的軟らかい鋼材に比べて降伏強さが高く、曲げ加工が困難です。さらに重要なのは、曲げ加工中に非常に速く硬化する点です。これにより、曲げ部分の材料がより脆く、硬くなります。また、ステンレス鋼はスプリングバックの傾向が強く、曲げ後に元の形状に戻ろうとします。これらの特性に対応するためには、使用する工具が十分な強度を持っている必要があります。

適切な工具鋼の選定

パンチやダイスに使用される材料は極めて重要です。通常の工具鋼では摩耗が早く、ガリング（ステンレス製ワークの一部が工具面に付着し、傷や欠陥を生じる現象）も発生しやすくなります。

ステンレス鋼の繰り返しの大量生産における曲げ加工では、焼入れおよび研削処理された工具鋼への投資が非常に推奨されます。この素材で製造された工具は優れた耐摩耗性と長寿命を備えています。良好な結果を得て、ガリ現象（異常摩耗）を事実上なくすためには、鏡面仕上げの工具を用いるのが最適です。これにより超滑らかな表面が得られ、摩擦や材料の付着が低減され、部品のステンレス鋼表面が本来の状態で維持されます。

正しいダイ開口部

V字型ダイの幅は基本的な計算です。一般的な経験則では、ステンレス鋼の適切なダイ開口部を決定するために、材料の板厚に8を掛けます。例えば、10ゲージ（約0.135インチ）の板材の場合、通常1インチのダイ開口部が必要になります。

狭すぎるダイを使用すると、過剰なトン数、亀裂の発生、工具の摩耗が早くなる可能性があります。逆に、広すぎるとスプリングバックが発生しやすく、正確な角度を得るのが難しくなります。また、望ましくないほど大きな曲げ半径ができてしまうリスクも高まります。常にトナージチャートを確認し、使用する材料とダイ幅の組み合わせに対してプレスブレーキがどの程度の力をかけることができるかを把握してください。

スプリングバックと曲げ半径への対応

ステンレス鋼における曲げ精度の妨げとなるのはスプリングバックです。これに対抗するためには、材料のスプリングバック傾向を予測して、希望角度よりも大きく曲げておく必要があります。スプリングバックの量は、材料の引張強度が高くなるほど増加します。

金型の選択も、得られる内曲げ半径を決定する要因の一つです。一般的な原則として、パンチ先端半径は目的の内曲げ半径よりもやや小さくする必要があります。しかし、材料はダイ開口部に応じて自動的に半径を形成します。エアベンディングを行う場合、内半径は通常、ダイ開口部の15～20％程度になります。この関係性を理解することは、希望する部品仕様を得るために不可欠です。

成功のための最終的な考慮事項

主要な要因に加えて、差を生むいくつかの小さなヒントもあります。常に工具を清掃し、柔らかいステンレス表面に傷が付く原因となる汚れや破片を取り除くようにしてください。ダイに硬度の高いウレタンパッドを使用すると、部品の底面を傷から保護できます。難しい部品で最高品質の曲げ加工を実現するには、使用目的に応じてツーリングの専門家に相談することで、貴重なアドバイスを得られる場合があります。ステンレス鋼を曲げて、強度と精度があり、外観仕上げも整った部品を作るためには、ツーリングに対して少し注意を払うだけで十分です。